(この記事の執筆者:塚田聡子)

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 ※ 画像はYahoo!映画から引用

このお正月に、イギリスの伝説的ロックバンドであるクィーンを題材とした映画、「ボヘミアンラプソディー」を観に行った。ちまたでは結構評判で、映画の内容もさることながら、クィーンの楽曲が素晴らしいと言われている。とはいえ、1980年代頃にピークだったロックバンドで、私はその頃、さほど音楽に興味がなく、クィーンの名前は知っていても、どんな曲があるかはピンと来ていなかった。

それでも、映画が始まり、彼らのヒット曲が流れると、「あっ、これ知ってる!」「これも知ってる!」と、聞いたことのあるメロディーに心が弾んだ。何より、主人公であるボーカルのフレディ・マーキュリーのハイトーンボイスが美しく、ロックと言っても,メロディーが綺麗で、「こんなに良い曲が一杯あるんだ」と改めて感じた。

フレディは、ザンジバルという島の出身で、父の仕事の関係でインドで暮らしていたが、いざザンジバルに戻ろうとしたら革命が起こり、家族でイギリスに移住した。両親はゾロアスタ-教徒で、厳格な父親からは、いつも、「善き行いをしろ」と言われ続けていた。フレディは、上の歯がひとより多かったため、容姿にコンプレックスがあった。複雑なものを内面に抱えつつも、フレディは音楽への才能に溢れていた。パフォーマーとしての魅力も兼ね備えていた彼は、次々にヒット曲を飛ばし、クィーンは世界的なロックバンドとなった。この頃、フレディはメアリーという善き伴侶にも恵まれ、順風満帆のように思われた。

しかし、フレディは、メアリーという妻がありながら、自分の同性愛的傾向を押さえることができず、男性の恋人を作り、酒やドラッグに溺れていく。バンド仲間との関係も悪化し、解散の危機に陥る。そんなとき、当時、不治の病と言われたエイズを患い、余命わずかとなる。死を意識するようになった彼は、もう一度、クィーンとして輝きたいと思い、メンバーとの信頼関係を取り戻す。メアリーとは、新たに親友としての絆を得る。そして、アフリカの飢餓を救済するためのビッグコンサートである「ライブエイド」に参加することを決断。圧巻のパフォーマンスを見せる。

成功し、華やかなスポットライトを浴びることは、いいことばかりでは無い。常に新しい作品を生まなければならないというプレッシャーに押しつぶされ,自分のプライベートを容赦なく暴かれ、金目当てで寄ってくる周囲の人間に不信感を抱く。フレディは深い孤独を感じていたと思う。死を目の前にして、彼はようやく、自分が本当は何を望んでいて、誰を大切にすべきかに気づいた。

フレディは45歳の若さで亡くなっているが、その生涯は、自分探しの旅だったのかもしれない。