(この記事の執筆者:仲松大樹/名古屋ふれあいユニオン通信第224号掲載)

ご質問:先日父がなくなりました。遺品を整理していたところ遺言書が見つかったのですが、とりあえず開封して中身を確認してもいいものでしょうか。また、父は生前つねづね長男に家業を継がせたいと繰り返しており、遺言書の内容は財産をすべて長男に相続させるというものだろうという予想がつくのですが、長男は既に海外に移住して個人事業を旗揚げしており、家業は二男が継ぐことを希望しています。相続人全員の同意があっても、遺言書にしたがって相続をしなければいけないのでしょうか。

ご回答:お父様の自筆証書遺言が見つかったということですね。民法では、遺言書が見つかった時には遅滞なく裁判所に提出して検認の請求をし、相続人又は相続人の代理人の立会いのもとで開封しなければならないと定められており(1004条)、もしこれに違反すると5万円以下の過料に処せられる旨が定められています(1005条)。ですから、「とりあえず開封」するのではなく、速やかに家庭裁判所に検認の申立てをし、家庭裁判所で遺言書を開封・確認するようにしましょう。

家庭裁判所への検認の申立てそのものはそれほど難しい手続ではありません。必要書類も裁判所のウェブサイトに記載されていますので、順番に資料をそろえていけばご自分でも申立てができるでしょう。もっとも、親戚関係が複雑だとかといった事情で相続人の範囲が良くわからないときなどには、弁護士に任せるということもご検討いただければと思います。

なお、自筆証書遺言が有効となる要件は法律上厳格に定められています。例えば本文がパソコンで打たれていたり、日付けの記入がなかったり、氏名の記載や押印がなかったりすると、有効な遺言として認められません。遺言の内容について相続人の間で特に揉めないときはともかく、念のため遺言の有効性については弁護士に相談して確認をしておかれることをお勧めします。

次に、遺言書の内容と異なる相続をすることができるかという点ですが、結論としては、相続人の全員が合意すれば、遺言の内容にしたがう必要はないと考えられています(相続人以外の第三者に対する遺贈がある場合には、その人からも同意をもらっておく必要があります)。この場合、改めて相続人全員で話し合いを行い、遺産分割協議書を作成することになるでしょう。

相続の手続は、一度トラブルになってしまうとなかなか抜け出すことができなくなることが多いものです。少しでも悩みを感じる点がありましたら、早めに弁護士に相談してください。