(この記事の執筆者:塚田聡子)

マンション建設反対運動のリーダーに対する弾圧事件

瑞穂区白龍町の低層住宅が建ち並ぶ静かな地域に、突如として15階建てのマンションが建てられることになった。近隣住民達は反対運動に立ち上がり、奥田恭正さんはリーダー的存在だった。業者側は、住民達との協議に応じることなく、強引に建築を押し進めた。

平成28年10月7日、奥田さんは、マンション建設現場の入口付近で工事の様子を見守っていた。ダンプカーが現場から出ようとする際、奥田さんが邪魔にならないよう前を横切って反対側に行こうとしているのに、現場監督は、わざわざ奥田さんの前に立ちはだかって元の位置に押し戻した。現場監督が、急に奥田さんを抱きかかえるようにしたため、奥田さんは逃れようとして、体を右側に捻ると同時に右足を一歩後ろに下げた。このとき、奥田さんは一切、前方に力を加えていないのに、なぜか現場監督は大げさな身振りで後ろに倒れ込み、背後のダンプカーにぶつかった(ように見えた)。現場監督は携帯電話で百当番通報し、「奥田さんに両手で突き飛ばされた」と被害を訴えたため、複数台のパトカーが駆けつけた。奥田さんはその場で現行犯逮捕され、14日間勾留のうえ、起訴された。最終的には、無罪判決が確定したものの、1年半近くの間、被告人の立場にたたされた奥田さんの精神的苦痛は計り知れない。

明らかなえん罪

工事現場には防犯カメラが設置されていたが、現場監督と向き合う奥田さんの背後から撮影されており、その両手の動きは映っていなかった。ただ、奥田さんが体を右側に捻ると同時に右足を一歩後ろに下げていること、現場監督が背後のダンプカーの動きを確認しながらわざとらしく後ろに倒れ込んでいる様子は、はっきりと映っており、奥田さんが現場監督を両手で突き飛ばしたりなどしていないことは素人目にも明らかであった。

ところが、同じ防犯カメラの画像をもとに、警察は現行犯逮捕を行い、検察は勾留請求、公訴提起を行った。鑑定人に採用された東京歯科大学の橋本正次教授は、画像分析の専門家であると同時に体の動きの専門家でもあるが、「この画像は、僕が分析するまでもない。少し丁寧に見れば、奥田さんが現場監督を両手で突き飛ばしていないことは明らかだ」と述べていた。加えて、現場監督の動きが不自然であり、わざとダンプカーの方に倒れ込んだことが強く疑われるという指摘もあった。

国家賠償請求へ

奥田さんは、現場監督や業者に損害賠償請求するとともに、県や国に対して国家賠償請求を行うことを決意した。

奥田さんの刑事裁判が行われている間に、マンションは完成してしまった。しかし、奥田さんは、最後まで闘い抜くことを誓っており、少しもぶれることはない。奥田さんは、反対運動を始めた当初の気持ちをこう振り返っている。「自分としてはこの反対運動には全くかかわらないか、やるなら最後まで徹底的にやるかどちらかだと思っていました。しかし、初めて町内のみんなで集まった日にこれはやらなければと決意しました。自分一人になっても最後まで続けると思ったことを覚えています」と話している。

理想を貫くのが難しい世の中で、間違っていることに対して間違っていると言い続ける奥田さんを、ぜひ応援してあげて欲しい。

いっしょにたたかいましょう

第1回の口頭弁論は10月2日(火)午前11時から、名古屋地方裁判所1102号法廷で開かれる。お時間のある方は、ぜひ傍聴にご参加いただきたい。

※ 名古屋白龍 住環境を守る会のウェブサイトもご参照ください。