(この記事の執筆者:塚田聡子)

季節を感じる、園庭のある幼稚園

名古屋の官庁街である丸の内に、名古屋教会幼稚園がある。100年を超える歴史を持つプロテスタントの教会が運営している。キリスト教では、「小さきものを大切に」という精神のもと、幼き者や弱き者達を尊重すべきとされる。名古屋教会幼稚園でも、家庭的な雰囲気のなか、子ども達1人々々にたっぷりと愛情がそそがれている。

この幼稚園には小さいながら園庭があり、子ども達は、雨が降らない限りは外に出て、自然とふれあいながら1日を過ごしている。砂場で砂をいじったり、プールで歓声を上げたり、すべり台などの遊具で遊びながら、季節のうつろいを体一杯に感じている。

幼稚園の真南に高層マンション

ところが、この幼稚園の真南に、プレサンスという会社が15階建てのマンションを建設しており、完成が間近に迫っている。完成すれば、冬至はもちろんのこと、冬至を過ぎても長期間にわたり園庭は日影となる。子ども達の感じる圧迫感や、ビル風による被害なども心配だ。

名古屋教会は、建築の差し止めを求める仮処分を申し立て、さらに、本訴も起こしている。私も弁護団の1人だ。しかし、幼稚園が建っているのは商業地域であり、日影規制の対象にはなっていない。建築基準法に違反さえしていなければ、建築を認めるのが裁判所の傾向であり、裁判の行方は楽観できない。

子ども達が日常を過ごす幼稚園の真南に、15階建てのマンションを平気で建築する企業の姿勢にも、それを許している行政の態度にも、大きな疑問を感じる。経済効率ばかりを重視し、大切なことを見失っていると思う。もっと余裕のある、心豊かな社会であって欲しい。

子どものころの経験は人生を生きる力になる

私は子どもの頃、団地で暮らしていた。団地の真ん中には公園があり、コンクリートで作られた山や、ジャングルジム、ブランコなど、たくさんの遊具があった。もちろん、砂場も。その他に、空き地が1つあり、バトミントンや野球を楽しむことができた。

団地には子供会があり、夏祭りやクリスマス会など、楽しい行事が盛りだくさんだった。夏祭りのとき、公園に大きなスクリーンが用意されてウルトラマンが上映されたこと、みたらしやラムネなどの屋台が並んだこと、クリスマス会でプレゼント交換をしたことなど、今でもはっきりと覚えている。その影には、母親達の頑張りがあったと思う。

子どもの頃に、大人に見守られながらのびのび遊んだことは、大きな財産となる。大げさな言い方をすれば、人生を生きる力になると思う。

一緒にかんがえましょう

幼稚園の真南に高層マンションが建ち、周辺が次々開発されるなかで、子ども達はのびのびと遊ぶことができるだろうか。日が射さなくなり、だんだん空が小さくなっていくなかで、大人に見守られていると感じることができるだろうか。

たとえ都会のなかでも、幼稚園や保育園、学校、児童福祉施設など、子ども達が日常を暮らす場所の周辺は、高層マンションやホテルを建てず、緑を残して、自然豊かな環境を守りたい。子どもをみんなで育もうという温かく余裕のある社会を目指して、10月20日(土)にシンポジウムを開催することになった。多くの方が参加してくださることを願っている。

チラシ表

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